もう一度食べたい:もう一つのサトウキビ 黒い穂、甘さの印
まだ青い穂と、ソルガムの茎。全体に天然のワックスが白く吹いている=津武欣也撮影 ◇本名はスイートソルガム
◇「バイオ燃料に」、再び脚光
「沖縄や種子島にあるサトウキビとは違う、もう一つのサトウキビをご存じですか。法師ゼミが鳴くころ、穂先の実が黒くなると食べごろなんです」--そんな質問を、夏が来るたびに続けている。トウモロコシに似た茎や葉っぱ。硬い茎の皮をむき、芯をかじると、砂糖水のような甘い汁が口いっぱいに広がり、なんとも言えない幸福感に包まれたものだった。昭和30年代、故郷・広島の瀬戸内の島では「サトウギ」と呼んでいた子どものおやつ。本当の名は何という作物だったのか。【津武欣也】
間もなく穂を伸ばすスイートソルガムと中村准教授。葉っぱの縁はカミソリの刃のように鋭い=津武欣也撮影 「少女時代、三宅島で食べたサトウキビの味をもう一度味わいたい。穂が黒く熟すと、その節を切ってもらい、甘い味をかみしめたものです」と千葉県成田市の梶原良枝さん(60)。北九州市若松区の小浜六男さん(68)からも「子どものころ、郷里(南さつま市)の畑に植わっていた『カラカンキッ』。サトウキビに似て実に甘く、子どもたちの大好物でした。郷里にも種苗会社にも尋ねましたが見つかりません」と便りが届いた。
地方によって「サトウギ」「サトウキビ」「カラカンキッ」「タカキビ」などと呼び名は異なるものの、どれも同じものらしい。探すのはちょっと難しいか……そう思い始めた7月初め、何気なく見ていたテレビの画面に目が留まった。アフリカの砂漠地周辺で収穫されている雑穀の「ソルガム」。その黒く実った穂は、記憶にある「サトウギ」の穂にそっくりだった。
「サトウキビのように甘い茎を持つソルガム。そんな品種はあるのでしょうか?」。独立行政法人・九州沖縄農業研究センター種子島さとうきび試験地(鹿児島県西之表市)に電話すると、主任研究員の寺内方克さん(41)から「それはスイートソルガムではないか。糖度はサトウキビと同じくらいあり、米国ではシロップ原料になっている。以前はうちでも研究栽培していたが、今は植わっていない」。
独立行政法人・農業生物資源研究所(茨城県つくば市)の育種場や、遺伝子研究のためのジーンバンクに取材した結果も同じだった。昭和30年代まで各地に残っていた「もう一つのサトウキビ」は、在来種のスイートソルガムだったのだ。
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名前は分かった。だが、この時代に「子どものおやつ」にしかならない作物を植えている農家があるのだろうか。出合えたのは県立宮城大学食産業学部(仙台市)の実習農場だった。
昨年収穫したスイートソルガムの穂。実取り用の穂(手前)とはボリュームが違う=津武欣也撮影 「化石燃料に代わるエネルギー源として、糖度の高いスイートソルガムは有望。サトウキビと異なり、東北、北陸どこでも栽培できるメリットがある。バイオエタノール原料として、いかに地上部全体の収量をアップさせるか。それを研究している」と同学部准教授の中村聡さん(39)。案内された約3アールの農地にはさまざまな品種のソルガムが植えられ、1メートルほどに伸びていた。糖度は13~14。穂先が黒くなるのは10月に入ってからという。
甘い品種では糖度20とサトウキビにひけをとらないものもあるが、糖料作物としての栽培が狙いでないだけに、糖度が低いのもやむを得ない。中村さんと一緒に未熟な茎をかじってみた。じっくりと味をかみしめ、プッとカスを吐き出す。「やっぱり味が若いですね」。それでも、少年のころの記憶を呼び起こすに十分な甘さだった。
「在来のものは穂先の実を取るモチキビが主で、茎の甘いものは明治期以降に入ってきた。現在はもっぱら飼料作物として栽培されており、糖料としての栽培はゼロと言っていいのでは」と中村さん。ほぼ同等の糖度を持ちながら、サトウキビに負けて消えてしまった理由を「ソルガムの甘み(果糖)とサトウキビの甘み(ショ糖)の性質の違い。ショ糖は固まるが、果糖はドロッとしたシロップどまり」。固まるかどうか、が勝敗を分けたらしい。
研究室にあった米国産のソルガムシロップをなめてみた。黒みつのような色と香り。カブトやクワガタ、カナブンが群れる「昆虫酒場」の樹液に似た味だった。
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「甘くなるんはまだ先だ。穂の実が黒くならんと」。夏の終わり、母子のそんな会話を聞いたであろう「サトウギ」や「カラカンキッ」。消えたと思った作物が、半世紀を経て再び脚光を浴び始めている。子どもののどを潤す甘味ではなく、今度は社会を潤すバイオマス資源として--。
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◇スイートソルガムの問い合わせ
宮城大学食産業学部中村研究室(仙台市太白区旗立2、電話・ファクス022・245・1278)▼種子は「ソルゴー」などの名称で市販されている(在来種かどうかは不明)。
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そんなものあったんだぁ。じゃぁ、今は自然には生えていないっていうことぉ。。。。?